蒐記 <第二話> ~強欲命奪~

※この物語はフィクションですのであしからず。現実と虚構の区別がつかない方は読むのをご遠慮下さい。


2006年11月17日T県A市で住所不定無職の67歳男性がコンビニへ強盗に入り、店員に軽傷を負わせる事件が発生。

同日、午前5時半頃、犯人が包丁を持って店内に押し入りレジの金銭を要求。当時、店内はアルバイト店員1名しかおらず、犯人の要求通り現金(7万8千〔円〕)を渡すも左腕部を切りつけられ軽傷を負うが、店内にある非常ボタンを押して奥にある休憩所に立てこもり、その間に通報によって駆けつけた警備員に取り押さえられ警察に引き渡された。動機は、「金が欲しくてやった」と供述したとされる。



 「あ~ら、またこの手の事件かよ。今度も真性かまってちゃんかい?」
と1人の男、機無 尋が面会室に現れた。
 「もう話すことは何もない、はやく刑務所でもどこでも連れて行け!」
 「威勢の良いじいさんだこと」
 「五月蠅い、ワシをジジイ扱いするでないわ!!」
 「だってじいさんだろ?最近本当に高齢者の事件が多くて。失礼するぜ」
いつものように椅子へと腰掛ける。
 「あいたたた。相変わらず腰が痛くなるような椅子なんとかなんねぇかな・・・」
 「お前さんの方が年寄り臭いわ」
 「うっせー、ほっとけ」
腰をさすりながら本題へ入る。
 「んで、何で今時コンビニ強盗なんてしたんだい?」
 「さっきから言ってるが金じゃよ金。それ以外に何があると思ってるんじゃ」
 「まぁそりゃそうか。んじゃ店員を包丁で切りつけた理由は?」
 「金を出すのにモタモタしておったから急がせるためにな。場合によっては殺すことも厭わない。おかげでもの凄くビビっておったわ」
 「包丁持った奴が現れたらそうだろうな。なんつー身勝手な。まぁ犯罪犯している時点ですでに身勝手か」
一息着いたあと首の骨を鳴らす。
 「あ~それで?盗んだ金は何に使うつもりだったんだ?」
 「生きるために決まっておろうに」
 「ふ~ん、生きるためねぇ~」
 「世の中金じゃ。金がないとろくに生きていけんからな。金のためなら人も殺めてみせよう」
尋が財布から金を出し机へ叩き出した。そして足を組み、顎に手をあて問いかける。
 「んじゃこの金恵んでくれてやる代わりに俺を殺してみろよ」
 「えっ?」
瞬間静寂が訪れる。
 「演技派か?まぁ公演祝いに大根でも送ってやりゃ。悪ぶるのもいい加減にしろくそジジイ」
 「何のことだ?」
 「とぼけてんじゃねぇっつてんだよ。刑務所のこと住み込みホテルとでも勘違いしてんのかって」
 「だから何の話をしてるんだお前さんは?」
 「裏はすべて取れている。あんたの真の動機もな。店員へ状況確認のため聞き込みに行ったとき、浮かばない顔をしていたので聞いたら全部話してくれたぜ?あんたが『刑務所に入りたい』ということがな」
 「くそっ、あの小僧喋りやがったのか」
 「いんや?それは俺が『聞き出した』からだ。あの店員最初は警察に『嘘』、つまりあんたのシナリオ通りの話をしていたぜ?」
 「じゃあどうしてバレたんじゃ」
 「だから俺が『聞き出した』からだっつってんの。嘘には特有の『臭い』があるんだ。それを嗅ぎ分けただけさ。よく言うだろ?『嘘臭い』って。まぁ嘘だけど」
腰をさすりながら話を続ける。
 「店員さん言ってたぜ?『ワシが生きていくには犯罪を犯して刑務所に行くしかない。このままだと死んでしまう。だから頼む、ワシが捕まるように協力してくれ。頼む!!』って泣きながら言い寄られたって。また、刑期を長くするために怪我まで負ってくれと言われできるだけ目立たない場所でほんの僅かな切り傷をつけられたって。そしたら、『痛くないか?本当にすまない』ってもの凄い勢いで迫ってきたので宥めるのが大変だったって。んで警備員駆けつける直前に『ワシのためにすまない、ありがとう』とお礼言われたあと、狂ったように店内暴れ出したってさ」
 「・・・」
 「なお、休憩所にこもっている間に無事にあんたが捕まるように防犯カメラのデータ消去までしてやがった。流石にあんたが泣きすがっている姿を見せられないのと供述に食い違いがあると支障が出るとマズいと思ったのか。どんだけお人好しなんだか。そうそう、当然ながらこの件に関しては俺の方から厳重注意しておいたから。犯罪に加担するような真似はやめろってな」
 「くっ・・・うぅ・・・」
尋は髪に指をクルクルと巻きながら問いかける。
 「それにしても。もっとまともな方法はなかったのかねぇ~?」
 「五月蠅い!お前さんにワシの何がわかるというんだ!!」
と老人の顔がくしゃくしゃになる。
 「ワシはまっとうに生きてきたんじゃ。そしてその先も生きていくハズだったんじゃ・・・」
そして俯きながら語り出す。
 「ワシもまだ若かった頃はバリバリに働いとった。しかし42歳の時に勤め先の会社が倒産して路頭を彷徨うことになった。仕方が無いから再就職するまではアルバイトをしとったんじゃが、食いつないでいくことに必死で会社探しどころじゃなかった。気が付けばそんな生活が3年、5年と月日のみが経ってのぉ~。ついに過労がたたって体調を崩してしまったんじゃ。これじゃ生活ができんと生活保護を頼ったが、役所の連中に『は?おじさん舐めてます?見るからにアンタまだ動けるでしょ?生活保護ってのは本当に困っている人のもんなんだよ。楽して生きようとすんじゃねぇよ』と言われた。必死に訴えたが全く相手にされんかった。いまでのヤツの顔は忘れとらん。50歳になったとき、ついにワシは住む場所も奪われ、あえなくホームレスとなった。それからも無情に月日だけが流れて・・・。気付けば65歳。とうとう年金が貰えて人並みの生活ができると思っていたがすぐに希望がシャボン玉のようにはじけ飛んだ。『住所はどちらでしょうか?』{ワシは今ホームレス状態じゃが・・・}『え~と・・・。年金の書類一式をお送りするために住所が必要なのですが・・・あっ。どなた様かご家族様の住所はおわかりでしょうか?』{身内なんて一人もおらん}『ん~。因みになのですが年金を支払われていた期間を教えていただけますか?』{確か42歳の時に仕事を失ったから22年間かの}『・・・。誠に申し訳ございませんが年金を受給できる資格と致しまして最低25年間以上の納税された方となっております』{ということはワシはその受け取れる権利がないと?}『左様でございます』{なぜじゃ!?少なくとも22年間支払ってきたじゃろ!!ワシが今まで支払ってきたことがすべて無駄だと?ふざけるな!!}」『ひぃっ!!大変申し訳にくいのですがそのようにお国が決めたルールですので・・・』{そうか・・・怒鳴ったりして悪かったのぅ。邪魔したな}それから生きる希望もなくかといって自ら命を絶つ真似だけはしたくなかったのでただただ生きるためだけに生きてきたんじゃ。それこそ人の生活水準未満の生き地獄だった」
老人は尋を見据えて言葉を発する。
 「こんなワシを嘲笑うか?堕ちにに堕ちきったこのワシを!!」
 「いんや?むしろよくその状況で自殺しなかったと感心している」
 「昔、親からの教えでな。どんなに苦しい状況でも命を絶つことだけは絶対にするなと」
 「立派な教えだな」
そこで良い香りを放ちながら一人の男が入ってくる。
 「こんちわ!丸ちゃんラーメンです!!」
 「おお、金はあとで払いに行く」
 「ここおいておきます。まいどあり!」
 「なんじゃ?」
 「伸びないうちにはよ食っちまえ。これは俺からの餞別みて~なもんだ。これが最後の晩餐的な。これから先は生き地獄。その前にせめて天国がないとな。生き地獄を生き抜いてまた天国にたどり着いたとき、その味を口にするだろう。だから今は必死でその味を舌に刻んどけ」
尋が立ち上がりドアへ向かって歩き出す。そして去る間際に、
 「次はトッピングはチャーシューかな?」
とにやにやしながらつぶやき廊下へ出る。
 「ふん、小僧のくせして生意気だ」
老人からすすり、泣く音が響き渡った。


 「尋さんお疲れ様です」
 「あぁ。今回も白だな。本当に生活困難者が生活保護貰えないとか。救いがないねぇ~この世って奴はよ」
 「はぁ」
 「そんなことより早く車回せ!事は1分1秒を争う」
 「了解です!!車だけは。他は受け付けません」
 「ん?どうしたんだい急に」
 「どうしたもこうしたも。今日は尋さんのおごりですからね?」
 「えっ?さっきあの老人にラーメン発注したの誰だっけ?」
 「指示したのは尋さんですよ?注文したのは私ですけど。」
 「俺はただ退屈だったから自分の髪で遊んでいただけだが?人にラーメンおごる金ないし」
 「じゃあなんでさっきあの老人におごるなんて言ったんですか!!」
 「俺の金でおごるなんて一言も言ってないだろ。ってことで支払いよろしく♪」
 「そんな~」
 

to be continued→

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<後記>
今回もどちらかというと『環境』がそうさせてしまった犯罪をイメージしました。というのも世の中の犯罪の中にはこの手の物が多数存在しているわけです。自分が生きるためを自己的と言ってしまえばそれまでなのですが、生きるために犯さざるをえない類いの物。前に、どこかの国で自分が生き抜くために人を殺すことも厭わない人がいることを知りました。彼らもまた生きることに対して文字通り必死で生きているだけなのです。まぁだからといって犯罪を犯して良いとは思いませんけど。だけど、それを一概に否定しかできない人間はよほど表面的な部分しか見えていないかその部分を直視できないか、あるいは単に平和ボケなだけか。これは持論なのですが「人格形成は『環境』に大きく支配される」と思っております。上記の例では多くの人間がそのような境遇の場合、人を殺める結果になるでしょうね。その理由は、その世界ではそれが『当たり前』だから。平和ボケしている人間からするとそれは尋常じゃないことは明らかなんですけどね。

それと生活保護の話を少し織り交ぜたのは、不正受給と生活保護が受けられないこの現状。なんと日本人が生活保護を受けられなくて外国人は生活保護を受け取っているという異常事態。ここは日本ではないのですか?と問いたくなるような。日本人が受け取っていてもそれらを搾取するような悪徳業者もいて話題にあがっていたこともありましたね。そりゃあ一部の役人が『生活保護なめんな』ジャンパー着るのも一理あるなと。


年金は自分が受け取るときにはいくらまで下がっていることやら。だったら何があっても自己責任でいいから自分で管理する方が良いですね。貰える年齢まで生きているとは限らないですし。昔、頭の体操で『朝三暮四』に関する問題があったのを思い出しました。猿が朝に3つの餌、暮れに4つの餌を与えたところ、猿は朝と暮れの数を交換しろって話だったかな?この猿を馬鹿だと嘲笑う人間が本当は先のことを考えられない愚か者だったって感じの。まさにこれかなぁと。

本件の老人は25年以上支払っていないため年金を受け取ることができませんでしたが平成29年8月1日から10年以上に短縮されるそうです(日本年金機構)。もう少しはやく制度が変わっていればこの老人も犯罪に手を染めることがなかったかもしれませんね。

政治家よ、ちゃんと政治しろ。
自分たちが与党になるためだけにどうでもいいことで相手にいちゃもんをつけ、議論すべき内容を放置すんじゃねぇ。


ってことで最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。

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